専称寺の歴史と文化財

概要

専称寺は梅福山報恩院と号し、いわき市の東部、夏井川南岸に所在する浄土宗寺院である。東面して総門を構え、その奥、石段を登った小高い山の頂付近に主要伽藍を配する。
本堂を東面して建て、その東南に開山堂や歴代上人の墓所、東北に庫裏や書院、正面に山門を配し、山門前の石段脇に鐘楼堂を設ける。
応永2年(1395)に良就十聲が開創した寺院で、東北地方に教線を伸ばした浄土宗名越派の檀林(僧侶の養成機関、仏教宗派の学問所)として発展し、六世良大の時に勅願所(天皇・上皇の勅願により、鎮護国家・玉体安穏などを祈願する寺社)となったという。
近世には名越派の伝法を行う檀林の一つとして、のちに名越四本山と呼ばれた寺院のなかで最多の末寺をもち、東北地方を中心とした浄土宗名越派総本山的寺院となった。
寛文8年(1668)に伽藍の大半を焼失したが、磐城平藩主内藤家の援助を得るとともに、奥州各地の末寺に勧進して、漸次伽藍を復興した。 
江戸中期には本堂や方丈、庫裏、衆寮、薬師堂、経蔵、千仏堂、十王堂、地蔵堂、庚申堂、鐘楼堂、山門、総門のほか、隠寮や学頭寮など多くの寮舎が建ち並んでいた。現在の本堂、庫裏は寛文8年の火災後に再建されたもので、本堂は寛文11年(1671)に一応の完成をみ、天和2年(1682)に内部の造作を整えた。庫裏は元禄3年(1690)の建立と伝わる。総門は意匠からみて、17世紀初期の建立と考えられている。

専称寺の文化財

建造物

本堂

国指定重要文化財
平成16年7月6日指定
(※福島県指定重要文化財(建造物)平成3年3月22日指定を経て)

庫裏

国指定重要文化財
平成16年7月6日指定
(※いわき市指定有形文化財(建造物)平成元年3月25日指定を経て)

総門

国指定重要文化財
平成16年7月6日指定
(※福島県指定重要文化財(建造物)平成3年3月22日指定を経て)

鐘楼堂

いわき市指定有形文化財(建造物)
昭和59年1月24日指定

史跡・名勝

専称寺境域

福島県指定史跡・名勝
昭和62年3月27日指定

古文書

専称寺文書(一括。附 文書箱・授手印状箱)

福島県指定重要文化財(古文書)
平成14年3月29日指定

彫刻

木造聖観音菩薩立像

いわき市指定有形文化財(彫刻)
平成元年12月4日指定

工芸品

黒漆塗金蒔絵葵紋几帳

いわき市指定有形文化財(工芸品)
平成4年3月27日指定